👶 妊娠中の栄養管理、特にDHAの摂取について悩んでいませんか? この記事では、最新の研究結果と実践的なアドバイスをもとに、赤ちゃんの健やかな発達のためのDHA摂取について詳しくご紹介します。
はじめに:DHAと妊娠の関係性
妊娠期における適切な栄養摂取は、胎児の健全な発達に重要な役割を果たします。特に、ドコサヘキサエン酸(DHA)は、胎児の脳発達や視覚機能の形成に不可欠な栄養素として注目されています。
近年の研究では、DHAの摂取が早産予防や子どもの認知発達にポジティブな影響を与える可能性が示唆されています。しかし、日本人女性、特に30代の魚介類摂取量は年々減少傾向にあり、適切なDHA摂取が課題となっています。
1. DHAが妊娠中に重要な理由

💡 「DHA(ドコサヘキサエン酸は、n-3系多価不飽和脂肪酸の一種で)、赤ちゃんの脳の発達に不可欠な栄養素です。特に妊娠後期に重要性が高まります」
DHAが重要な理由
- 脳の60%は脂肪で構成
– 神経細胞膜の主要構成成分
– シナプス形成の促進 - 神経細胞の発達をサポート
– 神経伝達物質の機能調整 - 目の網膜の発達にも重要
– 視細胞の発達に必須
– 視覚情報処理能力の向上 - 妊娠第三期に胎児へ優先的に供給
時期 | 重要性 | 特に注目すべき点 |
---|---|---|
妊娠初期 | 基礎となる脳の発達 | 神経管の形成 |
妊娠中期 | 神経細胞の形成 | 脳の基本構造の確立 |
妊娠後期 | 脳の急速な発達期 | シナプス形成の活発化 |
- 脳の発達への影響: DHAは脳のシナプス膜の主要構成成分であり、情報伝達を円滑にする働きを持っています。赤ちゃんの脳は出生後急速に発達し、この期間に十分なDHAを摂取することが、学習能力や記憶力の向上に寄与する可能性があります。 HealthPress
- 視覚の発達への影響: DHAは網膜の機能維持にも関与しており、適切な摂取は視力の向上や視覚機能の発達に寄与するとされています。 Japanese Health
- 早産児への影響: 在胎29週未満で出生した早産児に対するDHA投与の効果を検討した研究では、新生児期にDHAを投与された群で、5歳時の全検査知能指数(FSIQ)がわずかに高いことが報告されています。ただし、副次的な認知機能の向上は一部の項目で確認されなかったとされています。 ニューイングランド医学ジャーナル
- 母体のDHA摂取と胎児の神経発達: 妊娠中の母体のDHA摂取が胎児の脳内DHA濃度を高め、神経発達に寄与する可能性が示唆されています。一方で、母体と胎児のDHAバランスが神経発達に直接的な影響を及ぼさなかったとする研究もあり、さらなる検討が必要とされています。ホワイトクロ
1-2. 妊娠期特有のDHA代謝
妊娠期間中は、以下のような特徴的なDHA代謝が見られます
「妊娠期間中は多量のn-3系多価不飽和脂肪酸が胎児形成に必要とされており、死亡胎児の研究によると、特に妊娠第3期(妊娠28~40週)では1日必要量が67 mgと最大になる」(Clandinin MT, et al. Early Hum Dev, 5:355-366, 1981より引用)
- 妊娠中期から肝臓でのDHA含有リン脂質代謝が活発化
- ホルモンバランスの変化によりα-リノレン酸からDHAへの代謝が促進
- 不足時は母体が自身の脳のDHAを犠牲にしても胎児へ供給
1-3. 母体から胎児へのDHA供給メカニズム
最新の研究では、以下のような興味深い事実が明らかになっています
「母体血DHAが6.6%より高い場合には、臍帯血DHAは母体血DHAより低く、母体血DHAがこれより低い場合には臍帯血DHAは母体血より高い」(研究データより)
これは、胎児への供給に関して重要な示唆を与えています
- 母体のDHA状態が良好な場合は、胎児への過剰供給を防ぐ制御が働く
- 母体のDHA不足時は、胎児への優先的な供給メカニズムが働く
- 6.6%という値が、適切な供給の目安となる可能性
2. DHAの具体的な効果
赤ちゃんへの効果

- 12ヶ月時点での問題解決能力向上
- 記憶力の発達促進
- 学習能力への好影響
- 注意力の向上

- 網膜の発達促進
- 視覚情報処理能力の向上
- 目と脳の協調性発達

- 記憶力の向上
- 集中力の発達
- 言語習得能力の向上
📚 最新研究結果: 妊娠中の母親のDHA血中濃度が高いほど、生後12ヶ月時点での乳児の問題解決能力が高いことが確認されました。 さらに、この効果は母親の教育レベルを考慮しても有意であることが示されています。
母体への効果
早産予防効果
コクランレビューによる大規模な分析結果では
「2018年8月にエビデンスを検索したところ、ランダム化比較試験70件(対象女性被験者19,927人)が見つかった。早期産(37週未満)と超早期産(34週未満)の発生数は、オメガ3脂肪酸を摂取した女性群のほうがしなかった群よりも少なかった。」
具体的な効果
- 早産リスクの低減
- 超早期産の予防
- 低出生体重児の発生率低下
在胎日数への影響
研究結果から以下のことが判明しています
「臍帯血DHAが増加すると在胎日数が延長し、DHAレベルが1%上がると在胎日数がおよそ1.5日延長した」
ただし、以下の点に注意が必要です
- DHAを現状よりさらに5%も上げることは実質的に困難
- 臨床的な意義は比較的小さい
- 出生体重との直接的な関連は認められない
3. 推奨摂取量と食事での摂り方

妊娠中の1日あたり推奨摂取量は、500mg以上のDHA、授乳中は1日あたり600mg以上が目安と言われています。
3-1. 推奨摂取量
複数の研究機関から以下のような推奨量が示されています
「日本人の食事摂取基準(2015年版)では、妊婦および授乳婦の場合1日1.8g/日が目安量として設定されている」(厚生労働省)
国際的な推奨量
「国際脂肪酸・脂質研究学会の欧州委員会は、妊婦や授乳婦は最低でもDHAを200mg/日摂るように推奨している」(Koletzko B, et al. Br J Nutr, 98:873-877, 2007)
米国の推奨
「米国人のための食生活指針(2015-2020)によると、妊婦はメチル水銀の含有が低い様々な魚介類を最低でも227g/週(最大で340g/週)摂取するように推奨している」
3-2. 実際の摂取源と含有量
主な魚介類のDHA含有量(100gあたり)
魚種 | DHA含有量 | 推奨摂取頻度 |
---|---|---|
サバ | 約1,200mg | 週2〜3回 |
サンマ | 約1,000mg | 週2〜3回 |
イワシ | 約900mg | 週2〜3回 |
サーモン | 約800mg | 週2〜3回 |
マグロ赤身 | 約700mg | 週1〜2回 |
3-3. 母体のDHAレベルと胎児への供給
注目すべき研究結果
「母体血DHAと臍帯血DHAの転換ポイントである6.6%を、母体血赤血球中のDHA量の下限値と仮定するなら、協力者の母親の約3/4は、児のDHAの需要をほぼ満たしていた」
4. 注意すべきリスクと対策
4-1. メチル水銀のリスク
「魚介類にはメチル水銀も含まれているので注意しなければならない。一般的には生物学的濃縮により大型魚ほど多くのメチル水銀を含有している」
- マグロ(特に大型魚)
- メカジキ
- キンメダイ
- クジラ類
- キハダ
- ビンナガ
- サケ
- アジ
- サバ
- イワシ
- サンマ
- タイ
- ブリ
- カツオ
4-2. 母体の状態による影響要因
以下の要因がDHAレベルに影響することが判明
- 年齢
- BMI
- 喫煙習慣
- サプリメント摂取状況
- 学歴
- 受動喫煙
- 食生活習慣
- 運動習慣
4-3. DHAの吸収を阻害する要因
研究により以下の要因が特定されています
- トランス脂肪酸の過剰摂取
- n-6系脂肪酸の過剰摂取
- 抗酸化物質の不足
- 喫煙(直接・間接)
- アルコール摂取
- 運動不足
5. DHAを効率的に摂取するレシピ集
簡単!サーモンの味噌マヨ焼き

- 準備時間:10分
- 調理時間:15分
- DHA含有量:約600mg/1人前
材料(2人分): – 生サーモン:200g – 味噌:大さじ1 – マヨネーズ:大さじ2 – みりん:小さじ1 – 青ネギ:適量 作り方: 1. サーモンに塩こしょうをする 2. 味噌、マヨネーズ、みりんを混ぜる 3. サーモンに塗って、オーブンで15分焼く
イワシの簡単煮付け

- 準備時間:5分
- 調理時間:15分
- DHA含有量:約700mg/1人前
材料(2人分): – イワシ:4尾 – 生姜:1かけ – 醤油:大さじ3 – みりん:大さじ2 – 酒:大さじ2 作り方: 1. イワシは頭を取り、内臓を除去 2. 調味料を混ぜて煮立てる 3. イワシを入れて15分煮る
6. 注意点とリスク
7. その他の重要な栄養素との関係
DHAと相性の良い栄養素
- 神経管の発達に必須
- DHAとの相乗効果
- 推奨摂取量:480μg/日
- DHAの酸化を防ぐ
- 吸収率を高める
- 推奨摂取量:6.5mg/日
- 脳の発達に重要
- DHAの働きを補完
- 推奨摂取量:440mg/日
8. よくある質問と回答
- DHAサプリメントは必要ですか?
- 魚介類から十分なDHAを摂取できない場合は、サプリメントの利用を検討してください。ただし、必ず医師に相談の上で選択しましょう。
- 魚嫌いですが、どうすれば良いですか?
- DHAを含む魚油サプリメントの利用や、DHAが強化された食品の活用を検討してください。また、魚臭さの少ない白身魚から始めてみるのもおすすめです。
- つわりがひどく魚が食べられません。
- つわりが落ち着いてから徐々に摂取を始めましょう。その間はDHAサプリメントの利用を医師と相談してください。
9. 専門家からのアドバイス
- 🔍 産婦人科医からのアドバイス 「DHAは赤ちゃんの脳発達に重要な栄養素ですが、過剰摂取にも注意が必要です。1日の推奨量を意識しながら、バランスの取れた食生活を心がけましょう。 特に妊娠後期は胎児の脳が急速に発達する時期なので、意識的なDHA摂取が重要です。ただし、水銀の摂取には注意が必要なので、小型の魚を中心に、様々な種類の魚を取り入れることをお勧めします。」
10. まとめ
- ✅ DHAは赤ちゃんの脳発達に重要
- ✅ 1日500mg以上の摂取を目指す
- ✅ 青魚を中心とした食事設計を
- ✅ サプリメントの活用も検討
- ✅ 水銀摂取に注意
- ✅ バランスの取れた栄養摂取を心がける
参考文献
1. Braarud HC, et al. (2018) Maternal DHA Status during Pregnancy Has a Positive Impact on Infant Problem Solving 2. EFSA (2014) Scientific Opinion on DHA and brain development 3. 日本産科婦人科学会(2023)妊娠期の栄養管理ガイドライン
1. 系統的レビュー・メタ分析
- Middleton P, Gomersall JC, Gould JF, Shepherd E, Olsen SF, Makrides M. 妊娠中のオメガ3脂肪酸の添加. Cochrane Database Syst Rev. 2018;11(11):Cd003402.
- Lin PY, et al. メタ解析の結果によると、周産期抑うつでは対照者に比べて、有意にn-3系多価不飽和脂肪酸やDHAが低下. Biol Psychiatry. 2017.
2. 原著論文
- Clandinin MT, et al. 死亡胎児の研究によると、特に妊娠第3期(妊娠28~40週)での1日必要量. Early Hum Dev. 1981;5:355-366.
- Hamazaki K, et al. エコチル調査による妊娠中後期の抑うつとの関連. J Psychiatr Res. 2018.
- Carlson SE, et al. DHA supplementation and pregnancy outcomes. Am J Clin Nutr. 2013;97(4):808-15.
3. 基礎研究
- Martinez M. Tissue levels of polyunsaturated fatty acids during early human development. J Pediatr. 1992;120:S129-S138.
- Koletzko B, et al. 国際脂肪酸・脂質研究学会の欧州委員会による推奨. Br J Nutr. 2007;98:873-877.
4. 臨床研究
- Su KP, et al. 妊娠うつに対するDHAの効果に関する台湾でのランダム化比較試験. J Clin Psychiatry. 2008;69:644-651.
- Makrides M, et al. オーストラリアでの大規模介入研究. JAMA. 2010;304:1675-1683.
5. 公的機関の報告・ガイドライン
- 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2015年版).
- U.S. Department of Health and Human Services and U.S. Department of Agriculture. 2015–2020 Dietary Guidelines for Americans. 8th Edition. 2015.
6. コホート研究
- Kawamoto T, et al. エコチル調査の概要. BMC Public Health. 2014;14:25.
- Michikawa T, et al. エコチル調査の方法論. J Epidemiol. 2018;28:99-104.
7. 観察研究
- Markhus MW, et al. 母体血DHA状態と妊娠アウトカムの関連. PLoS One. 2013;8:e67617.
- Chong MF, et al. シンガポールでの母体血DHAと児の発達. J Clin Psychiatry. 2015;76:e848-856.
8. 技術報告
- Rose HG, Oklander M. 赤血球からの脂質抽出法の改良. J Lipid Res. 1965;6:428-31.
- Ohta A, et al. 血漿脂肪酸の迅速分析. Lipids. 1990;25:742-7.
※これらの参考文献は、本文中で引用された研究結果や知見の出典となっています。各文献の詳細な内容や最新の研究動向については、原著を参照してください。